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ゼロ・エネルギー・ビル

ゼロ・エネルギー・ビル

環境に配慮した建設への変革

執筆者: Ing. Raul Mora Alvarado

ゼロ・エネルギー・ビルとは、高いエネルギー効率を備え、建物の運用に必要なわずかなエネルギーを再生可能エネルギーによって賄うことで、エネルギー収支がゼロ、もしくはほぼゼロとなる建築物を指します。

これらの建物は、気候変動対策や化石燃料への依存低減に大きく貢献することから、多くの国の政府がその普及・開発に投資を行っています。しかしながら、建設コストの高さや、技術の普及がまだ十分に進んでいないことが、導入拡大のスピードを鈍らせる要因となっています。 

ゼロ・エネルギー・ビルは、地域の電力配電網と接続されており、再生可能エネルギーの発電量が需要に満たない場合には電力を受電し、逆に発電量が需要を上回る場合には余剰電力を電力系統へ供給する仕組みとなっています。

ゼロ・エネルギーの実現は、非常に意欲的でありながら、近年ますます実現可能性が高まっている重要な目標です。現在、世界各国において、政府機関および民間セクターの双方が ゼロ・エネルギー・ビル の導入に向けて取り組みを進めています。 ゼロ・エネルギー・ビルは、年間のエネルギー消費量を自ら創出する再生可能エネルギーによって賄うことができ、非再生可能エネルギーの使用を大幅に削減します。  
ゼロ・エネルギー・ビルへの移行による長期的な利点としては、環境負荷の低減、保守・運用コストの削減、停電や自然災害による影響の軽減、そしてエネルギー安全保障の向上などが挙げられます。

ゼロ・エネルギー・ビルの建設に向けては、ASHRAE をはじめとする業界団体や市場のリーディング企業とのパートナーシップにより策定された、先進的なエネルギー設計ガイドラインが存在します。 新築または既存建物の改修において建物のエネルギー消費を削減するためには、統合設計、エネルギー効率の向上、接続負荷の削減、ならびに省エネルギープログラムの導入など、複数の手法を組み合わせることが有効です。

一方で、再生可能エネルギーを活用した アクティブシステム による電力供給や空調には、太陽光発電、風力タービン、バイオ燃料、バイオマス、さらには水素燃料電池など、さまざまな選択肢があります。 例えば、太陽光発電パネルのみを導入した建物であっても、エネルギー需要を 15%〜30%程度削減することが可能です。

これに対し、断熱性能の向上や太陽熱、さらには居住者が発する代謝熱を活用するなどの パッシブ技術 を用いることで、発電設備を使用することなく、空調に要するエネルギー消費を 70%〜90%削減することが可能です。

要するに、ゼロ・エネルギー・ビルとは、環境負荷の低減を目的として、パッシブ型の省エネルギー技術と、再生可能エネルギーによるアクティブな発電システムを組み合わせて導入する建築であり、より高いエネルギー効率を実現するものです。

そのため、建設に着手する前段階において、これらの環境配慮型建築の設計者は、高度な 3Dシミュレーション技術 を用い、建物の立地条件や方位、地域の気候、使用材料、断熱性能、照明計画、さらには電気・空調設備の効率性など、あらゆる要素を最適な形で設計に反映させます。 この種の建築プロジェクトにおいては、環境コンサルタントやバイオクライマティック設計の専門家が重要な役割を担います。

英国では、このようなグリーン住宅の導入に非常に積極的に取り組んでいます。2006年12月、英国政府は 2016年までに新築住宅をすべてゼロ・エネルギー化する 方針を発表しました。現在の英国基準では、これらの原則に基づく建築を必須としてはいないものの、サステナブル住宅コードに沿って、今後9年間で規制は段階的に厳格化され、最終的な目標の達成が図られています。

ドイツは、住宅のサステナビリティに対する意識が非常に高い国の一つです。ドイツの「パッシブハウス」基準は、長年にわたり世界的な指標として位置づけられており、最新のパッシブ型省エネルギー技術を基盤として確立されています。また、一部のドイツ人設計者は、これらの先進技術分野において世界をリードする存在であることを示しています。 米国エネルギー省が主催する国際コンペティション「Solar Decathlon」では、ダルムシュタット工科大学によるグリーン住宅設計が最優秀賞を受賞しました。

欧州連合以外では、アメリカ合衆国も持続可能建築分野における国際的なベンチマークの一つとされています。1999年には、フロリダ・ソーラー・エネルギー研究センターが「Zero Energy Home」や、米国エネルギー省(DOE)の「Building America」といったプログラムの基礎を築きました。 さらに、全米各地の研究機関が持続可能建築に関する研究を進めており、DOEはこの分野のプロジェクトに対して、多額の投資計画を発表しています。

アメリカにおけるゼロ・エネルギー建築の事例も数多く存在します。その一例として、2007年10月に開業した、同国初期のゼロ・カーボン商業ビルが挙げられます。この建物はカリフォルニア州サンノゼに所在し、持続可能建築設計会社である Integrated Design Associates(IdeAs) によって設計されました。 また、Googleはシリコンバレー本社向けに、1.6MW(約1,000世帯分の電力供給に相当)の発電能力を持つ太陽光発電システムを完成させ、施設全体の約3分の1をカバーしています。

アメリカ以外の国々でも、ゼロ・カーボン建築の取り組みが進められています。カナダでは、「R-2000基準」が低エネルギー住宅建設における世界的なベンチマークとして確立されています。さらに、「Net-Zero Energy Home」は、ゼロ・エネルギー住宅の普及を推進するカナダの業界団体です。 加えて、カナダ住宅金融公社はエクイリブリアム・ハウジング・コンペティションを後援しており、これにより国内各地で12件のゼロ・エネルギー住宅プロジェクトの建設が可能となっています。

アジア地域においても、ゼロ・エネルギー建築の優れた事例が数多く見られます。中国南部・広州市では、Skidmore Owings & Merrillが、ゼロ・エネルギーの原則に基づいた69階建てのオフィス超高層ビルを2009年までに完成させる計画を発表しました。 またマレーシアでは、ラスラン・カリッド・アソシエイツが2007年10月に「Zero Energy Office(ZEO)」を竣工しました。これは、同国エネルギー省が推進する非営利団体 Pusat Tenaga Malaysia(PTM) のためのオフィスビルです。

一方で、ゼロ・エネルギー建築の導入には、考慮すべきいくつかの課題も存在します。主なデメリットの一つは、これらの技術、特に再生可能エネルギー設備の導入が、従来型建築と比べて初期建設コストを大幅に押し上げる傾向がある点です。しかし、中長期的には、技術の普及と進化によりコストが低減され、将来的には大きな利点となる可能性があります。 

理想的には、これらの建築物は電力系統に接続せずとも自立的にエネルギーを賄えることが目指されています。しかし、その実現には多額の初期投資が必要であり、現時点では補助金などの支援が不可欠です。そのため、実務上は多くの場合、電力需要や熱需要の変動に柔軟に対応できるよう、電力系統と接続された設計が採用されています。

参考文献
1.- National Renewable Energy Laboratory _ Accelerating to Zero Energy District
2.- Eco Inteligencia _ ¿Que es un Edificio de Energía Zero?
3.- US Department of Energy _ A Common Definition for Zero Energy Building
4.- ASHRAE _ Achieving Zero Energy